| 課題の背景 |
課題背景
【課題サマリー】
視覚障害のある住民への行政情報等の提供手段である「声の広報*」において、制作上必要なパソコン操作ができるボランティアの高齢化に伴う減少や機材の老朽化、また完成品をCD(CD-RW(以下、CD))で郵送する体制の維持が困難になっています。また、対象者の約1割にしか「声の広報」が届いておらず、情報の提供手段並びに今後、タイムラグが生じる恐れがあることが課題となっています。
*「声の広報」とは、視覚障害など、文字による情報入手が困難な方々に向けて、広報誌等、地域生活を営む上で必要な情報をCD等に録音し、無料で提供(郵送)することで、障害者等の社会参加を促進する事業です。
【制度改正による合理的配慮への対応が急務】
- 障害者差別解消法の改正に伴い、地方自治体における合理的配慮の提供が義務化されました。
- 視覚障害のある住民が、健常者と同じタイミングで同じ分量の行政情報を得られる環境を整えることは、社会参加の促進という観点からも必要な業務となっています。
【ボランティアの高齢化とインフラの限界】
- 音訳業務における多段階かつアナログな現行の作業体制を将来的に維持することが困難になりつつあります。
- 録音やCD複製に使用するPC(OS)と専用アプリの互換性の問題が生じやすく、動作の不具合が発生していますが、個人所有の機材に依存しているため、市による機材の提供等が難しい実態があります。
- 委託先ボランテイア団体において、パソコン操作ができる会員が減少しているため、これ以上の作業を引き受けることが困難な状況にあります。
【物理メディアに伴うコストとタイムラグ】
- 音声データをCDに複製し、個別に郵送する手法をとっているため、広報誌が完成してから当事者に届くまでにタイムラグが発生しやすい状況になっています。
- 現在、市内の1級・2級の視覚障害者76名のうち、実際の利用者は7名(約1割未満)に留まっており、周知不足と手段の制限から新規利用者の開拓が進んでいません。
- 現在の公式ホームページの環境では、直接音声データを掲載することができません。
現在の業務フローと課題
【現状の取り組み状況と業務フロー】
- 原稿提供(市)
広報誌・議会だよりの完成原稿の段階で、人名等の誤読されそうな箇所にふりがなを付記し、毎月25日頃ボランティア団体へ提供
- 音訳・録音(ボランティア団体)
担当者を決定。(広報誌の場合は2人1組で記事を半分ずつ分担)
録音室または自宅PCで各自の環境に合わせて録音
- 校正・マスター音源作成(ボランティア団体)
別のスタッフで聴き直し、読み間違い、イントネーション、音量・音質のばらつきをチェック・修正し、マスター音源を作成
- CD複製(ボランティア団体)
マスター音源を利用者人数分のCDに複製
- 発送・回収・再利用管理(市)
月初に利用者へ個別に郵送。聴取後のCDを返送してもらい、回収。再利用の管理も市で行う
▶作業時間:ボランティア団体が行う②③④の作業時間は、1人10時間。市広報は2人対応のため合計20時間
▶課題の所在:録音・編集・メディア複製・郵送・回収というすべてのプロセスが手作業かつ物理的な媒体(CD)に依存しており、ボランティアの身体的・時間的負担が非常に大きい点にあります。情報の即時性と提供範囲の拡大を阻む構造的なボトルネックとなっています。

対象業務の規模
- 音声化の対象:市広報誌(毎月1回発行、1冊あたり24ページ前後)、議会だより(年4回発行)。
- 対象住民:市内の1級・2級の視覚障害者76名
- 現在のサービス利用者:7名
- 現状の実務の担い手:ボランティア団体「こだま会」の会員14名。
対象データの音声化と拡張性:市が保有する様々な資料(WordやExcel等)から文字情報を抽出して音声化する仕組みを希望します。将来的には、広報誌だけでなく障害者支援ガイドブック、ゴミ分別マニュアル、防災マニュアル、健康ガイドなど、更新頻度は低いものの住民生活に不可欠な各種ストック型情報への横展開を目指しています。
変えたいポイント
【現状】
- ボランティアが個人の機材で全ページの朗読と録音を手作業で行っており、多大な時間と労力がかかっている。
- 7名という限られた人にしかCDを配布できていない
- 広報誌の発行から当事者に届くまでにタイムラグがあり、緊急情報などの伝達には対応できていない。
【想定する解決イメージ】
- AI音声合成技術等を活用し、原稿テキストから音声データを自動または半自動で生成することで、市職員の簡単な操作で音源データが生成される。
- スマホアプリやウェブサイト等を活用したデジタル配信を導入し、タイムリーに情報を届けられるルートを構築する。
- 視覚障害者が行政情報などの情報を、どのように入手しているのか、 現状を把握する。
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| プロジェクトのゴール |
実証の成功指標
【最低限クリアすべきベースライン】
- 音声情報を多くの人に遅滞なく届けられること。デジタル配信(ウェブ、アプリ等)の開始により、従来のCD利用者以外の視覚障害者にも情報が届き、利用者数が拡大すること(※具体的な数値目標は採択後に協議)
- 広報誌以外にも提供できる情報の幅が広がること
- 情報を受ける側の選択肢が増えること
【理想とする成果指標】
- 音声データの作成から配信(郵送準備完了またはデジタル公開)までの日数が短縮され、情報の即時性が向上すること。
- 利用者の満足度(NPSの視点を取り入れ、他者にも広めたい情報手段であること)
最終目標
広報誌に限らず防災情報や障害者支援ガイドブックなど多様な行政情報を、すべての視覚障害者へ迅速に届けられる持続可能な体制を確立することです。
スマホを所持する当事者にはウェブやアプリを通じてタイムリーに行政情報が届き、スマホを持たない当事者にはCDがこれまで通り届くという、誰一人取り残さない情報アクセシビリティの環境を目指します。
社会的意義
- 誰もが同じ情報量や質、タイミングで市政情報や災害・生活情報にアクセスできる「情報バリアフリー社会」の実現への貢献
- 全国的にも課題となっている「福祉ボランティアの高齢化・人手不足」の解決モデルケースの創出
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| 想定する実証内容 |
検証したいこと
【音声作成プロセスの効率化検証】
市が保有する完成原稿からAI音声合成等を用いて音声ファイルを生成し、市職員が容易に校正できるシステムの操作性と、それに伴う作業時間の削減効果。
- 自動音訳の質(誤訳が許容範囲かどうか)
- 視覚障害者の方に受け入れてもらえるかどうか(アンケート)
歓迎する検証内容
- 画像を説明する補足テキストを生成できるか、または、精度の検証
また、将来的な理想の姿として、窓口や災害時においてもリアルタイムに音声化できることを目指したい。市役所窓口での案内業務や、災害避難所における緊急情報を、その場で音声やテキストに変換して当事者に伝える仕組みの技術的・運用的な可能性について、今回の実証で可能なら検証したい
実証の5W1H
- When(期間):2026年9月頃から2027年2月
- Where(場所):地域福祉課などの市役所内
- Who(対象者):地域福祉課職員、ボランティア団体会員、協力に同意が得られた視覚障害当事者
- What(想定内容):行政テキスト(広報誌等)のAI音声化ツールの提供、校正用インターフェースの検証、デジタル配信(アプリやウェブ)の試行検証。
- How(想定する測定方法):利用者へのアンケート調査やヒアリングによる満足度・受容性の評価。
解決策の方向性
目的が達成できれば、アプローチは自由です(解決手段は限定しません)。例えば以下のような方向性が考えられますが、これらにとらわれない幅広いご提案をお待ちしています。
- 画像解析や言語モデル等を用いて、複雑な段組のデータから正しい順序のテキストを抽出・音声化するソリューション
- 職員が使いやすい、イントネーションや地域の固有名詞の読み方を直感的に修正・学習させられる校正エディタ(UI/UX)の提供
- タイムリーに届けるデジタル配信プロセスの構築
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| 提供可能なリソース |
データ
- 市広報誌のテキストデータ(PDF、Word、または原稿段階のテキストデータ)
- 議会だよりのテキストデータ
- (実証の進捗に応じて)障害者支援ガイドブック等の各種生活情報テキストデータ
- これまで作成したCDや音源データ(要望があれば)
※本市の広報誌には基本的には機密情報は含まれません。
フィールド
- 市役所内
- 体験会などで、視覚障害のある当事者やボランティア会員による音声の聴き取りやすさや配信手段に関する検証・フィードバックを庁内会議室等で行うことは想定しています
人的リソース
- 地域福祉課 障害者支援班の担当職員による実証運用の伴走および関係者調整
- 総合政策部 デジタル戦略課の職員による技術的・セキュリティ面のアドバイス
- 音訳ボランティア団体「こだま会」の会員へ協力を依頼する予定
その他
- 実証成果を県内市町に対して、書類などで情報共有
- 長門市サイトで発信
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| 留意事項 |
留意事項
- 利用者のデジタルデバイド対応:現在の利用者は高齢の視覚障害者であり、スマホの操作が困難な方も含まれます。
- 庁内AIガイドラインの遵守:市が定めている「AI利用ガイドライン」に準拠したシステム設計やデータの取り扱いが求められます。具体的なセキュリティ要件については、採択後にデジタル戦略課等と協議します。
- AIの読み上げ精度に関する理解:地域の固有の地名や人名について、AI音声による誤読が発生することは担当課として許容しています(地域住民であればある程度推測できるため、100%の精度は求めません)。実証では、辞書機能などを活用することで、精度を高めていける仕組みを求めています。
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| 自治体の体制・推進姿勢 |
カウンターパート
- 主担当:健康福祉部 地域福祉課(障害者支援班)
- 関連部署:デジタル戦略課、企画政策課(広報担当)
- 協力先(予定):ボランティア団体「こだま会」(誤読等の校正やフィードバックでデータ作成に協力)
プロジェクトの進め方
- 定期的な打ち合わせ(原則オンライン会議を想定)を行い、実証のシミュレーションとシステム設計を共同で進めます。
- 現地視察:市職員への説明や操作レクチャー、ボランティア団体の現行の稼働状況を確認など、必要に応じた現地視察や対面での打ち合わせの実施を想定しています(具体的なタイミングは採択後に協議します)
担当者に関する特記事項
- 地名や人名など、AI音声の読み間違い等について、100%の精度を求めることは難しいと現実的に考えており、実証を通じて精度を上げていける仕組みがあることを期待しています
- 庁内のAI利用やセキュリティ関連の情報提供等については、デジタル戦略課職員がサポートします
- 長門市に限った課題ではないので、県内市町への横展開の支援へも協力したいと考えています
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| 実証後の発展性 |
本格導入の道筋
実証結果に応じて次年度(2027年4月)以降の本格導入および予算化に向けた具体的な協議・検討を進める方針です。
横展開の可能性
音訳ボランティア団体が抱える課題や、情報アクセシビリティの確保という課題は、多くの自治体が共通して抱える課題です。同様の構造的課題を持つ他の自治体や公共機関(図書館・福祉団体等)への横展開の可能性があると考えています。
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| 求める企業像 |
期待する姿勢
- 障害者福祉や地域社会の課題解決や社会貢献に強い関心を持ち、現場に寄り添って伴走していただけるアプローチを歓迎します。
- 高齢者のスマホ保有や操作等、運用の制約を理解し、現場のフィードバックをもとに試しながら柔軟にシステムを改善していける方をお待ちしています。
- 長年活動してきたボランティアの知見やこれまでの経験・貢献を尊重し、共に新しい協働の形を創り上げていくスタンスを持った企業からのエントリーを心より歓迎します。
専門性・技術
本プロジェクトでは、以下のような技術や経験を想定しています。必ずしもすべての要件を単独で満たす必要はありません。複数の技術を組み合わせた提案や、パートナー企業との共同提案も歓迎します。
【主に想定する技術・経験】
- AI音声合成技術、またはテキストデータを高精度で音声化するシステムの開発・運用経験
- 高齢者や障害者など、デジタルデバイド層に配慮した直感的で平易なUI/UXのデザイン実績
【あわせて歓迎する経験】
- ウェブサイト、アプリ、またはSNS等を用いた情報配信プラットフォームの構築経験
- 画像を説明する補足テキストを生成するシステムや技術の開発実績
- 障害者福祉分野、アクセシビリティ向上に関するシステムの開発・導入実績、または福祉関連の音声フォーマットに関する知見
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