| 課題の背景 |
課題背景
【課題サマリー】
山口博物館は動植物・考古・歴史など7分野にわたる約37万点の収蔵資料を持ちながら、展示スペースの制約から多くが収蔵庫に眠っています。それらをデジタルアーカイブ化して、「バーチャル収蔵庫」という形で公開し、出前授業でも活用しています。
この「バーチャル収蔵庫」には二つの課題があります。
- 運用基盤 更新作業がHTMLを扱える一部の職員に依存しており、コンテンツは年度末の一括更新にとどまっています。
- 学習体験 出前授業でデジタルコンテンツを活用しても「見せるだけ」になりがちで、子どもたちが能動的に関われる体験設計には至っていません。
運用基盤が整いコンテンツが充実することで、学習体験の幅は大きく広がります。 この2つをセットで解決する仕組みが求められています。
【法改正により、デジタル公開は博物館の『新たな使命』へ】
- 2023年施行の改正博物館法で、収蔵資料のデジタルアーカイブ化が博物館の正式事業として明記されました。
- 当館でもデジタルアーカイブ化に取り組んでおり、展示されていない資料を含む現在約2,000点が「バーチャル収蔵庫」として、公式サイトで公開、出前授業でも活用しています。
- HTMLを直接編集する仕組みのため、更新できる職員が限られ、年度末の一括更新にとどまっています。

【もっと能動的な学びの体験を提供したい】
- 「バーチャル収蔵庫」は出前授業でも活用されていますが、現状は「見せるだけ」の形式にとどまっています。
- 子どもたちが自分で調べたり、考えたり、まとめたりような環境が整っているとは言えません。
- 出前授業の現場では、地域の自然や歴史について「知らなかった」と感じる子どもたちも少なくありません。
- コンテンツを充実させることによって、子どもたちの知的好奇心を刺激する機会を増やしていきたいと考えています。
現在の業務フローと課題
【バーチャル収蔵庫の更新と活用の流れ】
- 収蔵品の撮影・データ化(館所有の機材で職員が実施)
↓
- 画像のアップロード(HTMLで直接編集)←ボトルネック
↓
- バーチャル収蔵庫の一括更新(年度末)
↓
- 出前授業での活用(週4日・小中学校を中心に実施)
▶課題の所在:
- 職員が通常業務の合間に更新
- HTMLを直接編集する方式のため、更新できるのは一部の職員のみ
- 出前授業では、「見せるだけ」の活用にとどまっているため、子どもが手を動かし、考え、まとめる体験設計になっていない
【現在の取り組み状況】
- バーチャル収蔵庫:
展示されていない資料を含む現在約2,000点をWebで公開中。
- バーチャル山口博物館:
展示資料を中心に公開。
企画展と常設展があり、企画展は職員自身が更新している。
対象業務の規模
- 収蔵資料総数:約37万点(動物・植物・考古・歴史・理工・地学・天文の7分野)
- 現在のデジタル公開点数:約2,000点
- 出前授業の実施頻度:週4日(火・木・金・土)、山口県全域の学校・公民館等で実施
- 出前授業の主な対象:小学生が最多
変えたいポイント
バーチャル収蔵庫の運用基盤が整いコンテンツが充実することで、学習体験の幅は大きく広がると考えています。
そのため、まずは職員が自力で簡単に更新できる環境を整えることが必須だと考えています。
【運用基盤】
<現状>
- HTMLを書ける一部の職員のみが更新を担当
- 年度末に一括更新するだけにとどまっている
<目指す姿>
- 専門知識がなくても、写真をアップロードしてテキストを入力するだけで誰でも更新できる
- 頻繁に更新できる環境が整い、バーチャル収蔵庫のコンテンツが継続的に充実していく
【学習体験】
<現状>
- 出前授業での活用は「見せるだけ」の形式にとどまっている
- 子どもが能動的に関わる仕掛けがない
<目指す姿>
- 子どもたちがバーチャル収蔵庫を使って、調べる・考える・まとめる体験ができる
- 「もっと知りたい」「博物館に行ってみたい」という気持ちが生まれる体験を届けたい
|
| プロジェクトのゴール |
実証の成功指標
本実証では、デジタル収蔵庫を使った能動的な学習体験を持続的に実施するために、職員が自力で簡単に更新できる環境を整えることが必須だと考えています。具体的には、以下の状態になることを目指します。
なお、具体的な指標の数値は採択後に協議します。
【運用基盤】
<必須>
- 専門知識がなくても、職員が自力で収蔵品情報をアップロード・更新できる状態が実現できている
- 更新作業が特定の職員に依存せず、複数の学芸員が運用できる体制になっている
<できれば>
- 項目の追加・変更など軽微なシステム変更が自分たちでできる
【学習体験】
<必須>
- 出前授業の現場で、子どもが実際に手を動かしてデジタルコンテンツと関わる場面が生まれている
<できれば>
- 授業後に「もっと調べたい」「博物館に行ってみたい」と感じた児童の声が確認できる
- 視覚障害・聴覚障害など、多様な方が利用できるユニバーサル対応ができている
最終目標
- 学芸員が運用基盤を自走させながらコンテンツを充実させ、その先に子どもや県民が収蔵品と能動的に関わる学習体験を継続的に提供できる状態をつくること。
- 将来的には、デジタル収蔵庫を通じて「いつでも、どこでも、誰でもアクセスできる地域の学びの拠点」へと広げていくことを目指します。
社会的意義
博物館法で収蔵資料のデジタルアーカイブ化が推進されているものの、取り組めているのは約4分の1にとどまっています。本実証で「安価かつ職員が自走できる運用基盤」を確立できれば、同様の課題を抱える施設へのヒントになります。
さらに、本実証は単なるデータ公開にとどまりません。充実した収蔵品データを学校教育で活用し、子どもたちの探究学習を促進する学習体験の先行モデルとしての価値があります。
|
| 想定する実証内容 |
検証したいこと
本実証では、運用基盤と学習体験の2つを一体で検証します。
【運用基盤】
ログイン・写真アップロード・テキスト入力という基本操作で、学芸員が自力で運用できる状態を実現できるか
【学習体験】
出前授業の現場で実際に子どもが手を動かし、興味が広がる体験が生まれるか
実証の5W1H
- When(期間):9月〜翌2月(約6ヶ月)
- Where(場所):
- 山口博物館の収蔵品データ・バーチャル収蔵庫
- 出前授業の実施現場(山口県内の学校・公民館等)
- Who(対象者):
- 山口博物館の学芸員・職員(運用基盤の検証対象)
- 出前授業に参加する小中学生(学習体験の検証対象)
- What(想定内容):
- 専門知識不要の収蔵品登録・更新システムの構築
- 収蔵品データを活用した能動的学習コンテンツの設計
- How(測定方法):
- 職員の更新操作の記録(更新件数・所要時間等)
- 出前授業後の児童・学芸員へのアンケートや聞き取り
(採択後に協議のうえ決定します)
解決策の方向性
目的が達成できるのであれば、技術やアプローチは問いません。以下はあくまでイメージ例です。幅広い提案をお待ちしています。
【運用基盤】
- CMSやノーコードツールを活用した、写真アップロード+テキスト入力だけで完結する管理画面の構築
- 項目の追加・変更など、軽微なカスタマイズを博物館側で行える仕組み
【学習体験】
- 収蔵品をテーマにしたクイズ・謎解き
- 気に入った収蔵品を集めるマイコレクション・図鑑づくり
- 収蔵品の情報をもとに調べ学習・発表につなげるコンテンツ
- 音声解説など、出前授業の場で活用しやすいコンテンツ
|
| 提供可能なリソース |
データ
- 現在バーチャル収蔵庫で公開中の収蔵品データ(写真・解説テキスト等、約2,000点分)
- どの分野・資料を実証に使用するかは、採択後に協議して決定します
フィールド
- バーチャル収蔵庫(Webサイト):システム・コンテンツの実証フィールドとして提供
- 出前授業の現場:週4日・山口県全域の学校・公民館等。実証コンテンツの試験活用が可能です
人的リソース
- 学芸員・職員による収蔵品データの提供・撮影補助、システム操作の試験利用への協力
- 出前授業担当職員による現場での実証コンテンツ活用とフィードバック提供
その他
博物館学校地域連携教育支援事業を通じ、学校との密なネットワークが形成されているので、出前授業で連携している学校への協力依頼が可能です。
|
| 留意事項 |
留意事項
【運用基盤】
- 収蔵資料の取り扱い:資料は貴重な文化財です。撮影・データ活用にあたっては博物館スタッフが立ち会い、適切な方法で行います。企業が直接資料に触れることはできません
- 著作権:現在公開中のデータは博物館に著作権が帰属していますが、一部に確認が必要なものが含まれる場合があります。使用資料の範囲は採択後に協議します
【学習体験】
- 学校端末のセキュリティ制約:出前授業先の学校によって、外部サイトへのアクセス制限が異なります。事前の環境確認が必要です
- デバイスの年齢制限:ARゴーグル等のヘッドセット端末は児童生徒への視覚的な制限があるため使用せず、手元の画面での操作を前提とします
【共通】
- バリアフリー対応:多様な方が利用できる配慮は歓迎しますが、必須要件とはしません。
|
| 自治体の体制・推進姿勢 |
カウンターパート
- 山口博物館(学芸課):実証のメインカウンターパート。収蔵品データの提供・更新システムの試験利用・出前授業での活用を担当。
プロジェクトの進め方
- 基本的にはオンライン会議を中心に進めます。
- 実証の方向性を定める初期段階での館内視察や、実際の出前授業に合わせた現場への立ち会いについては、現地にお越しいただくことを希望します。
- 実証を通じて現場からのフィードバックをもとに、試しながら改善していく進め方を想定しています。
担当者に関する特記事項
- 担当者は博物館業務と教育普及活動の実務に精通しており、収蔵品の分野特性や出前授業の現場感について具体的なフィードバックが可能です。
|
| 実証後の発展性 |
本格導入の道筋
実証で効果が確認できた場合、博物館として継続的に運用できる体制づくりを検討します。予算・体制については実証の成果を踏まえて関係部署と協議する予定です。
横展開の可能性
全国の博物館・資料館のうち、デジタルアーカイブに取り組めているのは約4分の1にとどまっています。
本実証で「安価かつ職員が自走できる運用基盤」を確立できれば、同様の課題を抱える施設への展開が期待できます。
|
| 求める企業像 |
期待する姿勢
- 現場の実態(学芸員の日常業務・出前授業の現場感)を理解しようとするスタンスで取り組める方
- 提案内容を実証の中で試しながら改善していく、柔軟な進め方ができる方
- 博物館という公共的な場への配慮を持ち、収蔵品や子どもたちへの敬意を持って関わっていただける方
「博物館業界は初めて」という企業も大歓迎です。新しい視点からの提案をお待ちしています。
専門性・技術
【主に想定する技術・経験】
- 写真アップロードやテキスト入力といった基本操作で動くWebシステムの設計・構築経験(CMS・ノーコードツールの活用実績でも歓迎です)
- 教育・文化施設・コンテンツ制作など、何らかの形でエンドユーザーの体験設計に携わった経験
【あわせて歓迎する経験】
- 博物館・美術館・図書館など文化施設とのプロジェクト実績(必須ではありません)
- タブレット端末を活用した学習コンテンツや体験型コンテンツの開発経験
上記すべてを満たす必要はありません。自社の強みを活かした提案をお待ちしています。
|