タブレット操作で道路のメンテナンス報告が簡単かつオンタイムになり、業務が大幅削減する予定!
あっとクリエーション株式会社(所在地:大阪市)
今回のレポートは、山口県周南市道路課の課題「全長1,200kmの市道メンテナンスを官民まるごとDXしたい!」に取り組んだ記録です。
周南市の道路管理は電話やFAXを利用し、報告確認作業がたいへんだった
周南市の市道をすべて一本道につなぐと約1200kmあり、周南市から秋田県まで到達する距離があります。この道路インフラを限られた人数の職員で管理しています。市の予算も職員数も減少傾向にあり、従来の体制や方法での対応は正直たいへんです。
課題を整理して、以下の3つのテーマで解決策を考えることとしました。
・現場対応の効率化
・業者側自治体側のメンテナンス経験の蓄積・継承
・市民への情報発信力の強化
「デジタル技術を活用してスムーズな仕組みを」と、事務局とともに「シビックテック チャレンジ YAMAGUCHI」で模索しました。
地図に情報を重ねて視覚化することで業務を大幅に減らす、あっとクリエーション株式会社
周南市道路課の課題解決に提案された企業があっとクリエーション株式会社です。あっとクリエーションは地図上に情報を重ねてすべてを視覚化するシステムを持っている会社です。神戸市役所や豊橋市役所、富谷市役所など各地の自治体でも協働の実績があります。
実証実験ではサイボウズ株式会社が提供する業務アプリ構築クラウドサービスの「キントーン」と、あっとクリエーション株式会社が提供する、Google Map以上GIS未満を目指した地図サービス「カンタンマップ」の併用が提案されました。
デジタル化するための実証実験を開始
2021年9月にあっとクリエーション株式会社が採択され、9月21日に周南市と初回打合せを行い、主に実証実験の概要が整理されました。従来の修繕の流れを図にすると、
(1) 修繕箇所を発見
<実証実験の概要>
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(2) 指定業者へ修繕を依頼
↓
(3) 指定業者が修繕依頼された箇所を修繕
↓
(4) 報告書・利用した資材の単価計算
↓
(5) 道路課へ報告
という流れです。(2)から(5)までは電話やFAXなどで連絡していたところを、システムを導入してデジタル化する実験を行うことになりました。
同年10月19日には周南市でテスト版のデモを確認しました。あっとクリエーション株式会社の知念さんからは「単なるITの導入ではなく、現場の業務改善を行うために、まずは何を減らしたいかを決めたい」という意見がありました。
10月20日から2022年1月10日までは開発期間となり、打合せが計4回ほど行われました。打合せを重ねることによって、周南市役所側からは「道路業務の改善だけでなく、かねてより中長期的に取組む予定であった民間企業との委託や、契約形態の抜本的な見直しにもつなげたい」という意見が出て、「ではその第一歩にしていきましょう」とビジョンが双方に共有されていきました。
写真は約20名の周南市職員への説明会の様子です。
その後、2022年1月12日から2月20日までの期間、現地で実証実験が行われました。
1月24日には実証期間中の工事業者にタブレットの操作方法の説明会が行われました。
工事業者の方からは「工事後に一度事務所に戻って報告する作業が省けるという意味で画期的!」という声があったそうです。
こちらの写真は2月5日に現場で施工者がタブレット端末を使ってキントーン(記事の後半で実証に使用したサービス・システムを解説します)で現状報告している様子です。
実証してみてわかったこと
検証の結果、キントーンとカンタンマップの活用は、従来の手法と比べて大幅に業務を減らせることがわかりました。
<実証に使用したサービス・システム>
これまで報告確認業務は、月末にまとめて紙で行われており時間がかかるケースがありましたが、この新しいシステムを導入すると、現地作業中でもオンタイムで状況報告・把握が可能になりました。現場の負担も一気に軽減されてモチベーションもあがりそうです!
実証の期間では費用制約と既存システムの改修の必要性から導入までいたっていないものの、実現の見込みは十分に確認できました。あっとクリエーションと道路課は令和4年度から直接契約し、引き続き実証を進めるとともに、既存の通報アプリとのシステム連携を図ることで、さらに利便性を向上させたいとのことです。
当時の担当職員だった岡本さんが精力的にさまざまな部署にあらかじめ声がけしておられたこともあり、打合せを重ねる中で道路業務の改善だけに限らず、民間企業との契約形態を抜本的に見直すといった業務全体改善の検討という大きなビジョンにもつなげることができ、ひとつのロードマップが描けたように感じます。
今回の課題は庁内だけの業務改善ではなく、自分たち組織だけにとどまらない、外部協力企業とのトータルの業務改善であり、見本となる自治体の事例がない中で、周南市の取り組みは大きなチャレンジだったと感じました。