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熊本市 環境局 環境施設課

15億円の歳出削減を目指す! ~最終処分場 浸出水 河川放流大作戦~

Point

解決したい課題

最終処分場から出る浸出水を河川に放流できる程度まで塩分濃度を下げたい。

想定する実証実験

浸出水から塩分を除去する、あるいは、焼却灰に塩分が含まれないようする技術や取り組みの実証

Story

集合写真

あなたが出したごみは100年残る!?

あなたが出したごみは、いつ無くなると思いますか?ごみステーションに出したとき?焼却施設で燃やされたとき?埋め立て施設に埋められたとき?一体、いつ、なくなるのでしょうか。

燃やすごみの行方を追ってみましょう。ごみステーションから回収された燃やすごみは、熊本市に2ヶ所ある焼却施設へ運ばれます。そこで、燃やされ、灰となり、約10分の1の重さになって埋め立て施設に運ばれて行きます。

その埋め立て施設が今回の舞台である「扇田環境センター」です。埋め立てられた灰は、環境に影響のない、安定した状態になるまで、何十年もの時間を要します。

単に時間だけがかかるというわけではありません。埋め立ててられている間、雨水を浸透させて洗い流したり、微生物の働きを利用したりして安定化(雨に曝されても環境に影響がない状態になること)を図ります。 この過程で、ごみの中を通過した雨水が汚水となり排出されます。

当然、汚水をそのまま地下に浸透させてはならないので、埋め立て施設の底部には、防水シートが敷設されており、汚水を1か所に集めて排出するための管が張り巡らせてあります。集めた汚水は、処理施設で浄化し、下水道に放流しています。

現在、熊本市にある埋め立て施設は、平成15年(2003年)に使用を開始し、令和30年(2048年)まで使用を予定しています。この45年の間、汚水は発生し続け、その間汚水を処理し続けなければならないのです。

さらに、使用を終えた後(埋め立て完了した後)も、一定の基準を満たすまで、汚水を処理し続けなければならないため…出されたごみが、環境に影響のない安定した状態になるには100年かかる、そう言っても過言ではありません。 

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浸出水の処理に年間5,000万円

当課では、ある悩みを抱えています。

それは、下水道に浸出水を放流するために、年間約5,000万円もの下水道使用料を支払っていることです。

浸出水の中には、多量の塩分を含み、河川に直接放流すると水辺の生物環境に影響を及ぼすおそれがあるため、下水道に放流し、本市の浄化センターでほかの生活排水と混合・希釈し、塩濃度を下げるしか方法がないのです。

浄化センターでは、広く市域の下水を処理しています。 万が一、浄化センターに多量の塩分が流入すれば、配管を劣化させたり、下水の処理に影響を及ぼす恐れがあります。

そのため、扇田環境センターから排出される浸出水の量、含有する塩分の量、それぞれに、1日当たりの制限が設けられています。

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塩分の原因はプラスチックの焼却灰

浸出水の塩濃度を高めている原因は、焼却施設から出る焼却灰にあります。

プラスチックごみの焼却に伴って、焼却炉の排気ガス中の塩化水素濃度が上昇します。そのままでは、煙突から放出できないため、消石灰で塩化水素を吸着し、灰と一緒に回収します。

その際に、消石灰と塩化水素が反応し、塩化カルシウムを生成します。これらの生成物は、最終処分場に埋めたてられ、雨水に溶け出すと、塩濃度の高い浸出水となります。

扇田環境センターに持ち込まれる埋め立てごみの約8割を、焼却施設から出る焼却灰が占めています。灰が直接、雨水に触れると、一度に大量に塩分が流出するため、灰の一部をフレコンバッグ(大きなビニール袋のようなもの)に梱包し、埋め立てを行っています。

こうすることで、一度に排出される塩分を抑制する取り組みを行ってきました。また、平成28年(2016年)に新設された西部環境工場においては、灰の一部を、再資源化し、埋め立て量の低減に努めてきました。

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近年の降水量とプラスチックごみの増加で処理限界!

これらの取り組みを行ってきたものの、近年、新たな課題が発生しています。

その一つは、気候変動に伴い、降水量が増えていることです。今年7月の豪雨が記憶に新しいところですが、一度に多量の雨が降る、降り続けることが近年増えてきました。多量の雨が降ると、埋め立て場に浸透する雨水が増え、浸出水の量も増えてしまうのです。

二つ目は、浸出水中の塩濃度が高まる恐れがあることです。その原因が、プラスチックごみ焼却量の増加です。令和元年5月20日の環境省通知にあるように、現在、自治体は、地域内でのプラスチックごみの処理を、強く求められています。

従来、プラスチックごみの多くは、海外に輸出され、再資源化されていましたが、その大半を担っていた中国が、プラスチックごみの輸入を全面的に禁止したことを受け、国内、引いては自治体による処理が急務な課題となっています。

熊本市では、家庭から出されるプラスチックごみにあわせて、産業廃棄物のプラスチックごみの焼却も行っていますが、今後、さらに処理すべきプラスチックごみの量が増えれば、浸出水の塩分濃度もさらに高まっていく恐れがあります。

もし、制限を超過する浸出水、塩分を下水道に排出し続けることになれば、浄化センターの処理に支障をきたし、みなさんの生活に影響を与えるかもしれません。

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15億円の歳出を削減したい!

扇田環境センターの浸出水を、下水道ではなく、河川に放流することができれば、さまざまな問題が解決します。

配管や下水処理施設への負荷が軽減されるだけでなく、埋め立てが完了するまでの30年間で見込んでいる15億円(年間5000万円×30年)の下水道使用料の削減も可能になるかもしれません。

そのためには、近隣の西浦川、井芹川に浸出水を放流するために、塩分を除去することが必要不可欠なのです。

展望

塩分除去による河川放流にとどまらず、浸出水から除去した塩分やカルシウムを使って、塩化カルシウム等の製品を製造できないかと考えています。経費削減にあわせて、新たな価値を創出できる可能性が、この取り組みにはあると考えています。

今回の事業では、浸出水から、塩分やカルシウムの除去・採取を安価に実現する斬新なアイデアを求めています。廃棄物や水処理の専門分野に限らず、多分野の皆さま方のお力添えをお願いいたします。

集合写真
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Vision

実現したい未来

浸出水を河川に放流することで、今後30年間に見込まれている15億円の歳出を少しでも削減したい。

得られるもの

全国の自治体が集まる会議での事例紹介、他自治体への横展開

Outline

背景 熊本市では、埋め立てごみを扇田環境センター(最終処分場)で受け入れている。扇田環境センターでは、埋め立てたごみに雨水を浸透させて、ごみの安定化(掘り起こして大気や雨に曝しても環境に影響を与えない状態にすること)を図っており、その際に塩分を多く含んだ汚水(以下、浸出水と呼ぶ)が発生する。
塩分発生の原因となっているのが、扇田環境センターへの搬入量の約8割を占める、焼却施設からの灰である。プラスチックごみの焼却過程で塩化物が生成され、それが灰の中に混じって扇田環境センターへ持ち込まれている。
塩濃度の高い浸出水を河川に放流すると、水辺の生物環境に影響を及ぼす恐れがあるため、浸出水は下水道に放流している。ただし、塩濃度が高すぎると配管を劣化させたり、下水処理に影響を及ぼしたりする恐れがあるため、1日あたりの放流量と含有する塩分量に制限が設けられている。
その制限を守るための課題となっているのが、気候変動による降水量の増加とプラチック焼却量の増加である。降水量が増えれば、埋め立て地に浸透する水量が増加し、浸出水量=放流量も増加する。また、中国をはじめとする諸外国へのプラスチックごみの輸出量が減少する中で、自治体によるプラスチックごみの処理量が増加すれば、浸出水中の塩濃度が上昇する恐れがある。
これまでも、浸出水中の塩濃度を抑制する取り組みを行ってきたが、根本的な解決には至っていない。もし、浸出水から安価に塩分を除去することができれば、浸出水を河川に放流することができ、浄化センターの負荷軽減と経費削減が可能である。
課題(詳細) ・浸出水から塩分を除去する既存の手法は存在するが、設備が非常に高額で導入が難しい
・浸出水の下水道への放流は、配管や下水処理施設を劣化させるなど下流施設への影響も大きい
・下水処理施設では、生活排水も処分する必要があり、一日の処理量に限界があり、超過分は扇田環境センター内で一時的に貯留しておく必要があるが、貯留の限界も見えてきている。
求める解決策 ・浸出水から塩分を除去する、あるいは、焼却灰に塩分が含まれないようする技術や取り組み
・除去した塩分をリサイクル原料として販売するなど収益化する取り組み
想定する実証実験内容(詳細) ・扇田環境センター内で浸出水から塩分やカルシウムを除去する技術の実証をし、河川に放流が可能なレベルまで低減できるか検証する
・浸出水の塩分等を用いて、塩化カルシウム等の原料とできるか検証
実証実験成功後の発展性 有用な方法があれば、対策案として処理への導入等を検討したい。
・行政視察対応時の、取り組みの紹介が可能です。
・令和3年度(2021年度)に熊本市で開催予定の、大都市清掃事業協議会施設担当課長会議にて、取り組みの紹介が可能です。(政令指定都市、東京都及び特別区の清掃事業担当局で構成される協議会。熊本市が令和3年度(2021年度)の開催都市になっており、施設見学時等に取り組みの紹介が可能です)。
提案企業に求める専門性 以下の専門性があると望ましい。
・製塩技術
・海水淡水化の技術
・廃掃法
・水処理
プロジェクトの進め方打合せ方法 一度現場視察に来ていただきたい。それ以外は、オンラインでの打ち合わせも可。
提供可能なデータ・環境等 ・浸出水
・採水データ等の扇田環境センター操業データ
プログラム終了後の本格導入 塩分除去に要する費用(設備・維持費)と、下水道使用料のコスト比較が、市に有利に働くならば、予算化・事業化を検討可能。

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